30分の待ち時間







あたしは駅を出てから(出されてから)、太一に引っ張られて駅まから遠ざかり、緑が生い茂る静かな道に来ていた。

住宅なんて皆無に等しい。

どこの田舎町だよ、本当に。




一応ビルが立ち並ぶ、あたしの自宅や学校がある市と同じ市のはずなんだけど。

少し離れてみると、こんなにも違う景色が広がっているんだ。

乗り過ごさなければ、一生来なかったであろう場所。

満員電車に毎朝揺られるあたしが、信じられなくなってくる。





「にしても何もねーな」


「そうね……」




しかしあくまで田舎。

コンビニもスーパーも見つからない。

そもそも田んぼが広がっていて、建物さえも見当たらない。

あるのは自動販売機に、古びた茶色い建物に、山だけ。

…緑が多くて静かなのも良いけど、コンビニやスーパーぐらいは欲しいなぁ。




「……ん?」



よく見れば、古びた茶色い建物に、看板があった。

薄くなっている字を見ると、駄菓子屋と書いてあった。




「太一。
駄菓子屋さんあるみたいだよ」


「おっ本当か?
行ってみるか!

いやー、駄菓子屋なんて何年振りだろうか?」




あたしの手を離していた太一は、頭の後ろで手を組みながら、駄菓子屋らしい茶色い小屋へ向かって行く。

…駄菓子屋あるみたいとは言ったけど、あれが運営しているのだろうか?

閉店した様に見えるけど……?









< 12 / 69 >

この作品をシェア

pagetop