好きで、言えなくて。でも、好きで。
「威叉奈の奴、どこに行ったんだ?医務室にはいなかったし。」


「入れ違いですかね?にしては、遅いですもんね。」



威叉奈が出ていってから数十分。


賭狗膳と早乙女は、戻りが遅い威叉奈を心配して探していた。



「一回部屋に戻るか。」


「そうですね………っきゃ!」



別ルートで威叉奈は戻っているかもしれない。

そう思って踵を返そうとした時、早乙女に物凄い速さで何かがぶつかって通り過ぎた。



「威叉奈?!あいつどうして」



「賭狗膳さん、追っかけて!」


「なんで?」


「涙!吹蜂さん、泣いてた!」


「はっ?」



急いで走っていた意味も、泣いてる意味も、賭狗膳と早乙女には分からないが、とりあえず尋常ではない事態のようだ。



「吹蜂…!」



「管理官?」


「賭狗膳……っ!?」



賭狗膳の顔を見た途端、棟郷の顔色が変わった。



屋上から威叉奈を追い掛けてきた棟郷は、見失わないように必死で2人に気付かなかった。


早乙女の声に我に返り、賭狗膳の存在を認識したのだ。
< 15 / 92 >

この作品をシェア

pagetop