好きで、言えなくて。でも、好きで。
捜して見付けて、隠れんぼ
「!賭狗膳さん!」


「ああ!あっちだ。」



棟郷の元へ向かっていた賭狗膳と早乙女にも、椒鰲の怒号は届いていた。


叫んでいたのは、威叉奈の名前。

威叉奈もそこにいるはず、早く向かわねば。

2人は、声の聞こえた方向へ急いだ。



「しょ、ご……」



「何で、逃げた?何で、俺から逃げる?」



「ったりめー…だろ、うが。薬盛ら、れて、拉致…られて、…監禁…されて。逃げねぇほ、がおかし、だろ…が。」



ゆっくり近付いてくる椒鰲。

威叉奈は後退りするも、距離は縮まる一方だ。



「威叉奈には俺が必要だろ?だから。」


「ざ、けんな。意味…分か、んねぇ。」



必要としてたのは喧嘩に勝ちたかった椒鰲の方、延いては駁兜に箔を付けたい総長の方だ。


威叉奈は賭狗膳に出会うまで、他人には何一つ求めることを諦めていた。



「俺を…追い出そうとしたのは……てめぇの方だろうがよぉ!」


「ああ、リンチん時か?あれは、威叉奈が悪いんだ。」


「………っ!」



迫った椒鰲に、渾身の力で振り上げた杖がわりの枝はあっさりと受け止められ、奪い取られてしまった。
< 57 / 92 >

この作品をシェア

pagetop