初恋








俺が、荒れはじめた頃




実咲が'泣け!'と俺を抱き締めてくれた事があった





あの頃は実咲と背丈もかわんなくて






「実咲、ずっとありがとう」




「賢人…………良かったね」





実咲はぎゅっと抱き締めてくれた





あのときの様に…………








俺はそっと、実咲を離すと



二人にもう一度向き直った






「もう一つ、伝えたい事があるんだ」






「なんだよ?まだあんの?」







「離婚するんだって




今まで、してなかったのが不思議なんだけど





それで、引っ越す事になる





母さんと、もう一度やり直すために





母さんも仕事あるし、俺も転校したくないから




二人で住めるとこ探して…………」






「そっか!良かったじゃん!引っ越しは手伝うからな!」





「家が遠くなるのは寂しいけど、学校で会えるもんね!





私も引っ越し手伝うからね!」







二人はこうやって、俺の背中を押してくれてたんだ





守ってくれてたんだ





本当は母親の実家に帰る話もあったけど





それは、転校になるから俺が無理で





今、高瀬と離れたくなかった




自分もバイトするからって説き伏せて





母さんも俺の気持ちわかってくれた







今のこの平穏を崩したくなかったんだ














< 89 / 106 >

この作品をシェア

pagetop