Alice In Happy End
 「俺は、ぼうし屋だ。君の名前は?」

「私は、アリスです」

「アリスか良い名前だな」

そう言ったぼうし屋さんの背中が
少し強ばった気がして私は不安になった。

「アリスは
 どうしてこんな場所にいたんだ?」

「あっ、えっと…………」

「悪い、なんか言いにくい事聞いたか?」

「違いますっ。そうじゃないんです」

「じゃあ、どうかしたのか?
 もしかして足が痛むのか?」

「いえ…なんでもないです」

私は結局、聞けなかった。
気のせいかもしれないし…………
でも、一度覚えた不安を忘れるのは難しい。

「そうか。痛かったら言えよ」

「はい」

「そんで、こんな場所にいた理由は
 教えてくれるのか?」

「はい。
 私、白ウサギさんを追いかけていたんです
 でも見失ってしまって」

「白ウサギ…………」

「あの…ぼうし屋さん?」

再びぼうし屋さんの背中が
強ばった気がした。

「いや、なんでもない。それでアリスは
 どこへ向かっていたんだ?」

「分からないんです」

「分からない?」

「はい。白ウサギさんが部屋に
 案内してくれるって言ってたんですけど
 場所までは教えてくれなくて」

そういえば白ウサギさんは
どこへ行こうとしていたのかしら。
よく考えたら私
なにも知らされてなかったわ。
ぼうし屋さんは白ウサギさんと
知り合いなのかしら。

「なるほどな」

「あの…」

「なんだ、アリス」

「ぼうし屋さんは
 白ウサギさんと知り合いなんですか?」

「…………」

「あの私、ダメな事聞きましたか?」

また、ぼうし屋さんの背中が強ばった。
聞いてはいけない事だったのだろうか。

「あぁ、いや。
 ちょっと昔のことを思い出してたんだ。
 俺は白ウサギとは古い付き合いでね」

「そうだったんですか」








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