漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】

恭に見詰められると、胸の奥がうずき出す。


顔が……近い。


そういえば、恭とのキスはあの一回きりだ。


それどころか、秋を過ぎた頃から恭は何かと忙しいようで、倉庫に来ては太一を連れて出掛けて行くようになった。


最近は、恭とゆっくりと過ごす時間なんてほとんどなくて……。


正直、恭不足。



……やだなあたし。


もっと、恭とくっつきたいとか思っちゃう。


こうやって、恭に触れてもらえるのが凄く嬉しくて、胸の奥がキュウっと音を立てる。


「……早いですね。クリスマスツリー出すの。」


恭があたしから手を離して、さっきまで飾り付けをしていたクリスマスツリーを見上げる。



あぁぁ……もう離れちゃうんだ。




「……そう?
みんながね、去年飾った大きなツリーがあるって教えてくれて。
さっきまでみんなで一緒に飾り付けてたんだけど、みんな寒いだの何だのって途中で飽きちゃって。」


「ふっ。仕方ない奴等ですね。茉弘は飽きなかったんですか?」


「あ。今、子供だなって思ったでしょ。

飽きないよ。こんな大きなツリーに飾り付けられるなんて、ずっと夢だったんだから。」


目の前のツリーを見上げる。


ざっと高さは3メールくらいあるだろう。


昔、お父さんとお母さんが生きていた頃、潤も含めて家族4人で、小さなクリスマスツリーに飾りつけをした。


小さなクリスマスツリーは、あっという間に飾りつけが終わってしまって、あたしと潤には少し物足りなかったっけ。


そんな様子のあたし達に、"いつか大きなクリスマスツリーを買おうね!"ってお父さんお母さんは笑ってた。


懐かしい……。


まさか、夢だった大きなクリスマスツリーに、こんな所で飾りつけを出来るなんて。


ついはしゃいじゃったよ。


「俺も参加したかったなぁ。」


「あ……」


あたしは、スカートのポケットの中を漁る。
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