カタブツ上司に迫られまして。
「そう……なんですか?」

「そうですよー。他の女の人と話をしている時は、なんて言うか硬い? って言うか、鳴海さんの時だけ柔らかいんですよー」

思わず無言で彼女を見た。

うん。さすがに監査室に所属するだけあって、ある意味では状況をちゃんと見ているのかな。

それにしても、それは……知らなかった新たな情報だ。

考えていたら、微かに影が差す。

「中村。先々週の報告書はあがっているのか?」

低い声に振り返ると、確かにいつもに輪をかけて怖い雰囲気を纏った課長が立っていた。

……でも、先々週?
中村さん、先々週の報告書をまだあげていないの?
それは私でも課長の立場からすると嫌かもー?

「す、すみません。先週はバタバタしていて……」

無言で立つ課長に、彼女の声は尻すぼみに小声になっていく。

「今日中に提出します……」

徐々に困ったように下を見ていく彼女を眺めて、課長は何も言わずにデスクに戻っていった。

……うん。課長の表情が硬いのは、単に彼女自身のせいだと思うなー。

書類も提出されていない状況で、同僚とおしゃべりしていたら、私だったらいい加減にしなさい、くらいに思っちゃう。

それでも、注意だけで終わらせるって事は……仕事中の課長は、皆平等精神も貫いているのかもしれない。

……それは疲れるわ。

思いながらも、課長は淡々と仕事をしていて、その姿はとても見慣れたものだと思う。

逆に家での姿の方が見慣れない。

清書の仕事を終わらせて課長に持っていくと、誰かと外線で話している最中だった。

置いていけばいいかな。そう思って書類を課長のデスクに置いたら、会話中の課長と目があった。

課長はボールペンを持ちながら、ちょいちょいと指先を動かす。
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