カタブツ上司に迫られまして。
コンピューター関係の専門用語は、正直言ってよく解らない。

監査室にいる以上、プログラミングも勉強しなくちゃいけないけれど、経理畑からの私は移動だったから……。

考えてみれば、移動した時にはすでに課長は課長だったなぁ。

今から3年前だから、課長は32歳?
正直、無表情な課長は今よりも無口で怖かった。

移動して少し経った頃、同僚たちに誘われて飲みにいった。
その席に課長もいて、とっても緊張して飲み続け、前後不覚になるくらい酔っぱらって、確か加代子に家まで送ってもらった。

あの当時は苦手意識しかなかったけれど、次第に慣れて行くもので、課長は仕事に真面目なんだと気づいたのは、結構初めの頃からだったと思う。

不真面目な人より真面目な方がいい。

そう考えてみれば、課長はある意味でタイプなんだろうけれど……。

とりあえず、冷静になろう。

考えながら顔を上げたら、いつの間にか営業所の所長と原本さんが話に加わっていた。

……全く気が付かなかった。

厳しい顔で呟く原本さんに、課長が顔をしかめ、最後に溜め息をついて、当面の策を所長と模索し始める。

それをぼんやり眺めていたら、上野君が肩を竦めて近づいてきて、缶コーヒーを差し出してくれた。

「お疲れ様」

「上野君もお疲れ様。ありがとう」

コーヒーを受け取って、隣の席に座った上野君を眺める。

疲れた顔をしているけれど、どこか楽しそう。

「本当にシステム関係強いんですね。上野君」

「僕はもともと企画経営部のIT関連の開発に居たからね。プログラマー入社だし。それを言ったら笹井課長もだよ」

「課長も?」

「もとは企画経営部のIT企画開発課主任」

へぇ。そうだったんだ。それは知らなかった。

「僕らが入社した頃には、もう監査室の課長だったけどね。28歳で課長職って、かなりの出世頭だ」

28歳で課長……それは若い。
28歳なんて、私からすると後2年後だけど。

2年後に課長になっている自分は想像もつかないな。
< 45 / 80 >

この作品をシェア

pagetop