俺様紳士の恋愛レッスン
「すみません、こちらもご挨拶を……!」



慌ててジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、片柳さんの所作と同じく、差し出した。



「申し遅れました。株式会社coocafe、人事部マネージャー、篠宮円華(しのみや まどか)と申します」

「頂戴致します」



スッと伸びてきた細長い指が、私の手から優しく名刺を引き抜いた。



「円華さん、素敵なお名前ですね」

「えっ!? あ、ありがとうございます……!」



向けられた言葉も、笑顔も、社交辞令だということは分かりきっている。

それでも心臓が跳ね上がってしまうのは、恐ろしいほどに整った、片柳さんの容姿のせいだ。


艶やかな黒髪は短くカットされ、柔らかなウェーブがかかっている。

アシンメトリーに整えられたヘアスタイルが、彼の均衡な顔の造りをより引き立てている。


本当に、完璧としか言い様がない。

< 10 / 467 >

この作品をシェア

pagetop