俺様紳士の恋愛レッスン
「……バカ」



十夜なりの優しさだとは分かっていても、嬉しくない。



「もう、手遅れだよ」



音沙汰ないチャット画面が余計に悔しくて、そっと伏せた。



十夜はコンサルタントで、私はクライアント。

今までもこれからも、決して変わらない立ち位置。


けれど私が失恋を遂げたら、その関係すらもなくなるのだ。

仕事で顔を合わせることはあっても、プライベートの十夜との繋がりはなくなってしまう。


そう思うと、「そんなに焦って別れる必要ないかな」などと、邪(よこしま)な案が一瞬頭をよぎるけれど、それは絶対にダメだと首を振る。


私は私のために、失恋をすると決めたのだ。

その目標だけは、何があっても見失ってはならない。


例え、十夜とタカちゃんの両方を、同時に失うことになるとしても。



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