俺様紳士の恋愛レッスン
「……食べなきゃ」



ズッと大きく鼻を啜り、腫れているだろう目を細め、目の前の皿に手を伸ばした。

空気が入らないようにと、皿の底までラップをきっちり包み込むのは、几帳面なタカちゃんのくせだ。

剥がしづらいし、そこまでしなくてもと、実は前々から思っていた。



「……おいし……」



もちろん、お腹はいっぱいだった。

けれど私の為にと貰ってきてくれた物を、捨てることなど絶対にできない。


無理やり口に押し込む唐揚げは、妙にしょっぱく感じた。

本当に美味しくて、本当に、不味かった。



「誰か……」



教えて。

私は、どうしたらいい?


正しい行動も、間違った感情も、私には何も分からない。


どうやったら、この漠然とした苦しみから解放されるのか。

私の本当の幸せは、どこにあるのか。



――誰か、教えて。





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