好きだからキスして何が悪い?
「……ったく」


頭上で大きなため息と、それが混ざった呟きが聞こえてきた。

恐る恐る顔を上げると、窓から差し込む明かりで髪を焦げ茶色に輝かせる如月くんが、階段を上っていく。


その先にあるのは、立入禁止とされている屋上に繋がるドアだ。

もちろん私も、一度も覗いたことはない。


如月くん、屋上へ行こうとしてたの?

ぽかんとして見上げていると、彼はポケットから銀色の鍵らしきものを取り出す。

それを鍵穴に差し込むと、カチャリと開く音が響いた。


「どうして……」


何で鍵を持ってるの?

という疑問は、彼の問い掛けで一旦喉の奥に引っ込む。


「このことも、誰にも言わないって約束出来るか?」


吸い込まれそうな瞳に見据えられて、ドキンと胸が鳴る。

それって、一緒にいてもいいってこと、ですか──?


「……はいっ!」


堪えきれず笑みをこぼした私は、しっかり頷いて、子供みたいに元気な返事をした。

ドアを開ける彼に続いて、明るい空の下へ飛び出る。

またひとつ、彼との秘密が増えたことにドキドキしながら。




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