笑顔の裏側に
「たとえ私に彼氏がいたとしても、それだけじゃ先生を守ることには直結しない。先生が一方的に私に近づいたとか何とでもこじつけられる。だから私じゃなくて先生に彼女がいるという設定の方が全てが上手く回るのよ。」

全ては私が蒔いた種ということにすれば良い。

先生は私を突き放せなくて、仕方なく受け入れていたことにすれば良いのだ。

悠は少し黙った後、再び口を開いた。

「もしかして、お前が一方的に先生に言い寄ったことにするのかよ。それじゃあ‥」

「良いんだよ。これは最終手段だから。それにこれしかもう方法はない。」

万が一の時、私が自ら悪者を買ってでなければ、先生の教師人生が絶たれるかもしれない。

私なら、受験のストレスの捌け口として見なされるだろう。

それに受験でしっかり結果を残せば、合格実績の欲しさに退学は免れるはず。

両者を天秤にかけた時、被害が少ないのは私の方だ。

「先生の彼女役に当てはいるのかよ?」

「一応お願いしてある。」

そう言えば、ため息をつかれた。

流石に呆れたかな。

無謀なことを言っているのは分かってる。

それが上手くいくかどうかもやってみないことには分からない。

この判断が本当に正しいのか間違ったのかなんて誰にも決められないし、もはや結果論だ。

「お前は何ていうか、策士だな。よくそこまで頭が回るよ。だけどな、お前がそこまでして犠牲になる必要なんてないだろ?」

予想を遥か斜め上に超えた言葉に、悠の顔を見入ってしまう。

そんな私の様子を知ってか知らずか、悠は続けた。
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