笑顔の裏側に
そして次の日の朝。

身支度をしながら重大なことに気づく。

私はどんな顔をして悠に会えばいいのだろう。

あんなことを言われて返事をしないわけにもいかないし。

どう接するのが一番いいのか。

考えても結局、答えは出ず、玄関を開けた。

「優美、おはよう。」

一番に視界に飛び込んできたのは、悠だった。

「え、あ、おはよう。どうしたの?こんなところで‥。」

「お前を待ってたに決まってるだろ。」

「え?」

いつも時間が合えば、一緒に行くけど、こんな風に待ち合わせすることは滅多にない。

なのに何で?

「ほら行くぞ。」

手を握られて引っ張られる。

半ば引きずられるようにして門を出た。

門を出ると手を離される。

名残惜しく思うのはなぜだろう。

悠の隣を黙って歩く。

チラッと横を見上げれば、真っ直ぐ前を向いていた。

その横顔が今は眩しく見える。

視線を落とせば、自然と目に映る腕。

昨日この逞しい腕に抱きしめられたんだと思うと、昨日の熱がぶり返すようだった。

慌てて視線を逸らして俯く。

「足はまだ痛むのか?」

「え?」

突如上から降ってきた言葉に驚いた。

「あ‥うん。ごめんね、歩くの遅くて。もしあれだったら先に…

いきなり腕を掴まれて、悠の腰に回された。

スクバも一緒に奪われる。

「俺に体重をかけろ。学校までが嫌なら、せめて駅まで。」

「でも‥」

「いいから。」

有無を言わさず、私の体を支えるようにして歩いてくれる。

さっきだって私の歩幅に合わせてくれていた。

「ありがとう。」

「早く治せよ。」

ぶっきらぼうに言って真っ直ぐ前を向いてしまう。

そんな悠の横顔を見ながら、心がじんわりと温かくなるのを感じた。

そうして駅まで支えてもらい、無事学校に着いた。
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