笑顔の裏側に
「今の私に待っててとは言えない。だから待ってることが辛くなったら、さっきの約束は無効にしていいからね。気持ちに整理がつくまでどれだけかかるかは分からない。だけどちゃんと自分の気持ちに区切りをつけなきゃいけないことだけはわかる。今日悠がずっとそばにいてくれたから、想いを伝えてくれたから、そう思えた。そんなことしか言えない私でごめんね。これから私のそばにいてください。」

握った手に額をつけるようにして、頭を下げた。

頭に優しい重みを感じる。

「顔を上げろ。」

ゆっくりと頭を上げた。

そっと髪を撫でられる。

「たとえお前が俺の気持ちに応えられなかったとしても、俺たちは幼馴染だ。それだけは一生変わらない。」

自然と涙が零れ落ちた。

それを指先で丁寧に拭ってくれる。

「ほら寒いからもう中に入れ。風邪引くぞ。」

そして門を開けて私の背中を押す。

振り返れば、優しく微笑んでくれていて。

小さくお礼を言えば、手を少し挙げて、向かいの門に入っていた。
< 320 / 518 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop