笑顔の裏側に
何も言わない私に痺れを切らしたように、悠が言葉を紡ぐ。

「言いたくないなら言わなくてもいい。だけどもうこんな真似は二度とするな!」

初めて悠に怒鳴られた。

滅多に声を荒げることにない悠が厳しい表情で私を睨みつけていた。

「ごめんなさい。」

その言葉しか返せなかった。

耐えきれず俯くと、そのまま抱き寄せられた。

「大きな声出して悪かった。だけどな、こうなる前に俺を頼って欲しかった。俺にはお前が必要なんだ。それだけは忘れないでほしい。」

ああ、こんなにも私を必要としてくれる人がいるのに。

私は何をやっているんだろう。

自分が世界で1人きりになったような気さえして。

自分を見失って、楽な道に逃げるようにして。

大切にしてくれる存在から目を背けていた。

「私を見つけてくれてありがとう。」

そう言って悠が安心させるように微笑むはずだった。

だけど口角がうまく上がらない。

痙攣を起こしたように力が入らない。

「お前‥まさか‥。」

その続きは言わなかった。

いや、言えなかったのかもしれない。

だってどんなに頑張っても上手く笑えない。

その現実から目を逸らすように、気づいたらポツリと話し出していた。

「ねえ、悠。私ね、ついに捨てられちゃったみたい‥。」

「何を言って‥。」

戸惑う悠に構わず今日の朝のことを淡々と伝えた。

話し出すと思ったより辛くなかった。

「私は今まで何のために頑張ってきたんだろうね?これから何のために頑張っていけばいいんだろうね?」

そんな途方も無い質問を誰に問うわけでもなく、呟いた。
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