笑顔の裏側に

温かい新生活

それから私は悠に手伝ってもらいながら、引っ越しの準備を始めた。

今日は初めてこれから生活する部屋に行く。

何があるのかを確認して必要なものを揃えるために。

あの後通帳を見れば、すでにお金が振り込まれていた。

きっとこれで全てを揃えろということだろう。

ありがたく使わせていただき、私は心機一転新生活の準備に取り掛かろうとしていた。

もらった地図を見ながら、歩いて行くと、まだ新築されたばかりの綺麗なマンションに辿り着いた。

駅から10分ほどで便利な場所だった。

ここがこれから私の住む場所ーーー。

立ち止まってしまった私を心配するように、握られた手に少し力が加わった。

「大丈夫だよ、悠。」

そう言った私はきっと無表情だろう。

あの日から私は全ての感情がもともとなかったかのように何も感じなくなってしまっていた。

嬉しいも楽しいもない。

悲しくも辛くもない。

ただ息をして目の前のことを機械的にこなすように生きていた。

まるで動く人形、ロボットのように。

それでも悠は変わらず接してくれる。

昨日のテレビの話やネットサーフィンして見つけた情報などたわいもない話をいつも通りに。

私はその優しさにただただ支えられていた。

マンションの中に入ってエレベーターに乗り、5Fで降りる。

そして503号室の前で立ち止まった。

暗証キーを入力すると、ガチャッと鍵が開く音がした。

ゆっくりとドアを開ければ、無機質な玄関が広がった。

靴を脱いで中に入れば、電化製品とクローゼットがひっそりと並んでいて。

それ以外は何もない、閑散とした部屋だった。

もう1つ部屋を開ければベットが置いてあった。

手当たり次第、洗面所、お風呂、トイレと見て行く。
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