笑顔の裏側に
「それで今度新商品を出すんだって。俺も味見させてもらったんだけど、めっちゃうまいの。だけど越川先輩は、もうちょっとコーヒーの味がした方がいいって。まだまだ改善を重ねるらしいけど、12月にはメニューに追加するって言ってたから優美も飲んでみて。」

悠がそう言うなら飲んでみようかな。

そんなことを頭の片隅で考えながら、今がチャンスだとここぞとばかりに話題を変える。

「越川先輩って、ショートボブの女の人?」

「あ、そうそう!優美は知ってたんだ?」

その言葉に少し引っかかりを感じる。

「知ってたも何も、悠と一緒のシフトの時があるでしょ?」

「え、あ、そっか。それで知ってたってだけ?」

その質問に違和感を感じながらも頷く。

まるでそれ以外にも越川先輩と接点があるみたいだ。

「ごめんごめん、俺の勘違いだった。越川先輩は俺たちと同じ高校だったんだって。」

「え‥。」

そう言われて嫌な予感がする。

こういう類の予感は大体当たるのだ。

そんなの、中学高校の時に嫌という程味わってきたこの感覚。

まさか大学生になった今もこうして巻き込まれることになるとは。

いや、でも昔と今では立場が違う。

幼馴染から彼氏になったことにより、これからそういうことはますます増えるのだろうか。

目の前に座る悠は、私が思い当たる人物がいないかを考えていると思ったのか、

「フルネームは越川七海で、俺らの1つ上だよ。」

そんな情報を提供してくる。

きっと本人は気づいていないのだろう。

想いを寄せられていることに。

そんな様子にため息をつきながら、箸を進めた。
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