笑顔の裏側に
「優美、今日はありがとう。」

「悠もありがとう。」

さっきとは打って変わって真剣な表情の悠に、身体を悠の方に向けた。

「俺、あの日から優美に別れようって言われるのが怖くて、ずっとお前を避けてた。正直今日も怖かったんだ。でも俺が声かけた瞬間、今にも泣きそうな顔をしたお前を見て、俺すっごく後悔した。一番大切で誰よりもそばにいたいお前を俺は自ら手放してしまった。」

駅で泣きそうになったこと、気づいてたんだ。

うまく誤魔化したつもりだったのに。

やっぱり悠に嘘や隠し事はできないなと改めて思う。

「今日優美が俺の心に歩み寄ってくれて、たくさんの言葉で不安を取り除こうとしてくれて、本当に嬉しかった。もう絶対に手放したりしない。だから‥」

そこで言葉を区切った悠に視線を向ければ、私の右手が取られた。

重なった手のペアリングが、陽の光に照らされてキラキラと輝いている。
< 516 / 518 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop