笑顔の裏側に
ずっとこのまま洗面所に座り込んでるわけにはいかない。

とりあえず水分補給をしないと脱水になりそうだ。

そう思って何とか立ち上がり、リビングに向かおうとするが、ズキリとはしる頭痛と視界の歪みに壁に手をついてしまう。

「ダメか…」

先生は動けないと悟ってしまったようだ。

もっとしっかりしなきゃ。

こんなんじゃ面倒だと呆れられる。

足に力を入れて壁から手を離し、歩き出そうとする。

でも壁から手を離そうとした瞬間、体が宙に浮いた。

「無理するなって言っただろ?目、瞑っとけ。」

先生が抱きかかえてリビングへと連れて行ってくれる。

気分の悪い私に気を遣ってなるべく振動が伝わらないように静かにゆっくりと歩いてくれた。

そしてソファーに座らせてくれる。

「少しでもいいから飲んで。」

そう言って渡されたコップ。

どこまでも優しい先生に涙が溢れそうになる。

スポーツドリンクを飲むと、気分が少し落ち着いた。

「ありがとうございました。あんな見苦しい姿、お見せして申し訳ありません。」

「そんなことないよ。誰だって体調悪くなる時がある。それより熱測って。」

机の上にあった体温計を渡される。

体温計が鳴るまで沈黙が流れた。

小さな機械音が鳴り響く。

私が確認する前に手元からサッと引き抜かれてしまった。
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