カテキョ。
急にシンゴ先輩はあたしの顔をまじまじと覗いてきて尋ねた。


「それより、大丈夫?」

大丈夫ではなかった。

大丈夫ではなかったけれど、先輩の真剣な顔と急な核心をついた質問に戸惑ってしまい、
「大丈夫です。」

そう答えることしか出来なかった。


「またまたぁ。なんかあったでしょ?お兄さんに喋ってごらん。」


ついさっき、あんなに真剣な顔して質問した人と本当に同一人物かと思うほど、シンゴ先輩は軽い感じで話しかけてくる。

この雰囲気なら軽く流してくれそうで話せる気がした。

「あたし、ついさっき失恋したんですよね。」


なぜか本当のことを喋ってしまう自分がいた。

本当は誰でもよかったのかも知れない。

喋りたかっただけだったのかもしれない。
「マジで?」

飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになりながら、シンゴ先輩があたしの顔をみた。


「はい。ついさっき。そこで。」

「何で?」

「好きだった人が、友達と付き合っていた……みたいな。」


なんだかどうしていいか分からず、とりあえずグラスに残っていたウーロン茶を飲み干した。

シンゴ先輩はそれ以上あたしの失恋話を聞かず、また話題を変えて軽いトークを繰り広げた。

あたしは、相変わらずシンゴ先輩の話に1言、2言で生返事していた。


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