カテキョ。

外は風が強かったけれど、雲ひとつないいい天気だった。

でも車の中のあたしたちの空気は重かった。

2人の沈黙が続いた。

沈黙に耐えきれなかったのか、先生は、窓を少し開けてタバコを吸い始めた。


タバコの臭いが鼻につく。

きっとこれが高校生のあの頃ならかっこいいと思ったのだろう。

いや、タバコだけではなく、きっと先生の1つ1つの行動すべてをカッコいいと思ったのだろう。


それ位、先生のことが大好きだった。

「先生、タバコ吸うんですね。」

「苦手か?」

先生が慌てて消そうとするから、逆にあたしの方が慌ててしまい、

「いやいや、前は吸ってなかったから……」

先生はあたしの表情に気付いたように少し笑って言った。


「仕事が大変でな。まぁ、仕事以外も色々と大変でな。でも、ちゃんと20歳は過ぎて吸い始めたから、健全だろう。」
 
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