芹沢くんの秘密。
芹沢くんと川瀬さん。




「はいっ。返却は6月29日までね」



「うん。ありがと。…じゃあね、川瀬さん」


「ばいばい、芹沢くん」




―――あれから。


わたしと芹沢くんは、お互い『川瀬さん』『芹沢くん』と呼び合うくらいの仲になっていた。



初めて芹沢くんの下の名前の呼び方を知ったあの日の次の週の金曜日、こんどは彼のほうから話しかけてきてくれた。


***



「川瀬さん、この間俺のクラスの体育見てた?窓から」


「へっ!?や、あの、別に見てたわけじゃ…。たまたま目に入っただけで」


本の整理をしてたら、横から話しかけられたのだ。


いつも会うときはどちらかが座ってるから、思っていたよりも芹沢くんが背が高くてスタイルよくて、びっくりした。


慌てて弁明していると、芹沢くんはクスクス笑っていた。



「そんな、慌てなくても…。だって、目、合ったよね?俺たち。

それとも、そう思ったの、俺だけ?」




「…ちがっ、わたしも、思ってた…。」



「じゃあ、見てたってことでしょ」



……。


何も言い返せなかった。


そんなわたしの様子をみて、また芹沢くんはコロコロと猫みたいに笑った。


一見無表情でクールそうに見える彼は、


いたずらっ子な一面もあるみたいです…。



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