夏狩り過程




夏は、どこかしこも、なにもかもが、キラキラしていて。

ワクワクして、自然に口元がゆるんじゃうような。


だから私は 夏が好きで



「小さい頭で必死に考えて小さい手で必死に集めて、きれいなシーグラスとか絵はがきとかネックレスとか風鈴とか」



私の線香花火はとっくに落ちていた。

要の線香花火は、いっそう激しさを増して、はじけて光った。

瞳の奥に、やきつく光。



「渡すとその子はいつもきれい、ってびっくりしてから、必ず笑ってよろこんで、大切そうにそれを抱えて、ありがとうって、俺に言うんだ」



なつかしそうに、いとおしそうに

要は口元をゆるめて紡いだ。


ついに要の火玉は落ちなかった。


はじめて見た。最後まで落とさなかった人。




「そのまま何事もなく卒園して小中離れて高校も違って、あのとき何も進めなかった昔の俺の大恋愛。これが俺の初恋」




そう言って要はこっちを向いた。



「ね、百?」



いたずらっ子みたいに首をかしげる要。

笑った顔が、─────重なった。



「……はい」



ああ、顔が赤かったらどうしよう。

だけど夏だし。

暑いんだから、仕方ない。
それに花火に照らされて赤く見えちゃっても、しょうがない。




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