夏狩り過程




「アンタ、そろそろ彼氏つくりな」



……ひさしぶりに、帰ってきたと言うのに。

玄関で出迎えてくれた母が、キャリーバックとリュックを背負って汗だくで歩いてきた娘に放った第一声。



「……そこはおかえり、でしょ。まず」

「おかえり、疲れたでしょう」

「そうそう、その調子」

「彼氏いない歴イコール年齢を貫いてる娘に危機感しかないってのよ」

「ちょっと」



なんてことを言うの。この母親。

軽くブルーになりながらも、かすかな蚊取り線香のにおいに懐かしさを感じる。ああ、実家。我が家のにおいだ。



「ほら。早く上がって涼みなね」

「はーい」

「そうそう、お客さん来てるから」

「はーい」



お母さんに荷物を手渡しながらサンダルを脱ぐ。

隣には大きめのビーチサンダル。お客さんて男の人か。このデザイン、近所のおじさんじゃなさそう。誰だろう。
お父さんの釣り仲間、とか。


きっとそのへん。




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