兄妹ものがたり


「まさかとは思うけど、まだ大和さんに言ってないなんてこと…」


伺うように顔を覗き込んでくる視線から逃れるように、必死で顔を背け続ける。


「言ってないの?」


まるで咎めるようなその声音に、堪らず小さく息を呑む。
それだけで、察しのいいななにはなんとなくの事情が理解できたようで盛大なため息が漏れ聞こえた。


「いくら大和さんだって、いつまでも隠しておけないから」


テーブルに残った最後のパウンドケーキを手にとって、呆れたようにななが呟く。


「言ったら絶対ウザイし…何となく気まずい」


パウンドケーキを小さくちぎりながら、大事そうにそっと口に運ぶななを見つめて堪らず深々と息を吐く。


「あいつにバレないようにって気つかってたら、デートもあんまり楽しめないし…堂々と手だって繋げない」


彼氏とデートした時の話を楽しげに披露する友人達を見ていて、何度となく羨ましいと思った。
水族館も動物園も遊園地も、映画館でさえ二人で行ったことがない身としては笑顔で話を聞くのも辛かった。
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