嘘とワンダーランド
会社には京やんに風邪をひいたから休むと言って連絡をして、それっきりである。

課長と顔をあわせるのが怖いから、家にも帰っていなければ会社にも行っていない。

連絡がくるのが怖いから、スマートフォンも電源を切っている。

「――どうしようかな…」

突然のことだったため、お金はそんなに持ちあわせていなかった。

鏡台のうえに置いてある財布を手に取って中身の確認をすると、1万円しか入っていなかった。

このまま行ったら、財布からお金がなくなるのも時間の問題だ。

腕時計に視線を向けると、朝の10時を過ぎていた。

この時間になったら、課長は会社にいるはずだ。

お金を下ろすための通帳と印鑑を取りに行くついでに、着替えも取りに行きたい。

「行くか」

わたしは呟くと、部屋のカギを持った。
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