嘘とワンダーランド
行為が終わっても、課長はわたしを腕から離してくれなかった。

彼の腕の中でわたしは、うつらうつらとぼんやりしていた。

「さっき、泣いてただろ?」

そう聞いてきた課長に、わたしは腕の中から彼を見あげた。

課長は眼鏡越しの目を細めると、
「やっと若菜と結ばれたんだと思ったら、嬉しくて…。

優しくできなくてごめんな?」

そう言って、わたしの頭をなでてきた。

「違うんです」

わたしは首を横に振った。

「あれは、嬉しかったから泣いたんです」

「そうか」

「課長と結ばれたことが嬉しかったから…」

呟くように言ったわたしに、
「そんなこと言われたら、またシたくなるだろ」

課長が笑って、唇に何度目かのキスをした。
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