GOLD BOY〜不良彼氏〜
せっかくこの時だけは浮かれていようと考えてたなのに、葵の所為で台無しだ。
だから、痛いと葵が叫んだ時に私はその声を消すように話した。
「美鈴っていいます!あの、健吾さんとは結婚式で知り合いました!」
どうでもいい自己紹介の後に、私はわざとらしい笑顔を作って碧さんにおじぎした。
「美鈴ちゃんっていうの?名前まで可愛いのね〜♪」
お世辞なのか本当にそう思ってくれてるのかは分からなかったけど、私は素直に喜んだ。
こんな綺麗な大人の女の人に、可愛い可愛い連発されていいのか今更思うけど
運転しながらクスクス笑う健吾も
隣でまだ足を押さえてブツブツ文句を言ってる葵も
碧さんに私が可愛く見えてることをツッコもうとしてないから素直に喜ぶことにした。
「それより、こんな暑い日に呼び出して何処行くの?」
サングラスをかけ始めた碧さんが口を開いた時には、隣の葵は寝不足でスヤスヤ寝ていた。
この男は本当に何を考えてんのか分からない。
急に私を車に押し込んで、健吾さんの彼女と挨拶させられて、しまいには葵は寝ちゃうし。
「海だよ、海。裕吾が働いてる海に今から行くとこ」
そして、今日二回目の蹴りを葵に喰らわせようとした時に健吾さんがニヤッと笑った。
……裕吾…?
以前聞いたことのある名前。
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