野球少女だって青春したい
第一章
鬱々とした長い通学路を通り、白い校舎へ向かう。2つある校舎の南側の方に入り、私は階段を登り始めた。上に行くにつれて重くなる足と、暑くなる空気にため息をつきながら、長い長い階段を登る。やっとのことで三階に着き、私は窓から見える野球場を眺めながら憂鬱な気分で静かな廊下を歩く。そして、2年D組と書かれた教室の扉を開けた。そこには誰も居なくて、机と椅子だけがただきれいに並べられている。
私は窓側の席の一番後ろに座り、背もたれにおっかかった。そしておもむろに呟く。

「今日も友達出来ないかな…」

2年D組野球部所属の私、小野寺琥珀には女友達がいない。友達といったら野球部のチームメイトくらいだ。小学三年生くらいの時から、チームメイトと話すことが多くなり、気が付けば、周りに女の子はいなかった。そしてその状態がそのまま続き、今やもう中二。このままだと一生女友達は出来ないんじゃないか、と疑いたくなる。

「そこにこだわる必用もないけどね…」

私はぽつりと呟き、鞄の中から本を出した。カバーがしてあり、一見小説のようだが、実は野球のルールブック。我ながら勉強熱心だな~、と思い、私は本を開いた。

本を読んでいるうちに、一人、また一人と教室に入り、気が付けば辺りは騒がしくなっていた。
私の前の席には女子四人が集まり、楽しそうに話している。聞こえてくるのは、どうでもいいような恋ばな。誰が誰のことを好きかとか、誰と誰がお似合いだとか、くだらない噂。なにが楽しいんだろうか。高い声で笑う四人を見て、私は思った。私だったらそんなしょうもない話で笑うことは出来ないな、と。
でも、そんな馬鹿馬鹿しいことを話して笑うことに、憧れない訳でもないけどね…。
いや、そんなことを考えるな!余計に憂鬱になった心を振り払うように、私はブンブンと頭を振った。馬鹿なことなら、野球部の奴等とやっているじゃないか。
私が思考をリセットしようと頑張っているとき、廊下から大きな音が聞こえ、そして、勢いのいい謝罪が聞こえた。

「すっ、すいません!」

何事かと思い、廊下の方を見るが、残念なことに人だかりができ、窓側の席からでは見えない。私は仕方なく席を立ち、廊下の方に移動した。
そこから見えたのは、細く華奢な体の女の子と、目付きの悪い大柄の男三人組だった。
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