ねぇ、私と付き合って。






私と薫が付き合い出したとき、学校中の噂になった、らしい。

確かにびっくりだろう。
クラスではほとんど喋らず笑わず、浮いた存在の私が、
学校の王子様の彼女になったのだから。

「村八分にされていた村娘が、いきなり将軍サマの妻になったくらいの衝撃だと思う。」

私がそう言うと薫はまたからからと笑った。


付き合うといっても、薫の態度がそれまでと変わることはなかった。

ただたまに――甘えてくるようになった。

でもその甘え方がちょっとカレカノのイメージと違う。

ハグ、みたいなものじゃない。
川で溺れそうになってる人が流木につかまるように、しがみつくように私に抱きつくのだ。

そんなとき大抵私は何も言えず、
震える薫の背中をトントンと叩くことしかできなかった。


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