【短】初恋ラビリンス


数分で出来上がった。

ちょうど良くお母さんも着替え終わってやってくる。


机の上に綺麗に並べられたオムライスとサラダとスープ。


「唯の料理はいつも美味しそうね」

「そんなことないよ〜」

お母さんにそう褒められ首を軽く振って否定するも嬉しい。


行儀は悪いけどTVを見ながらお母さんとご飯。



ある程度食べ終わってお母さんが話しかけてきた。

「唯が夏祭りに浴衣を着てまで一緒に行く人は誰なのかしらね?」

「ブッ...お、お母さん何言ってるの!?
友達に決まってるじゃん!」

ニヤニヤしているお母さんを見て 勘違いされていることが分かった。

は、早く否定しないと勘違いが加速する!


アワアワとする私を尻目に

「あの唯がねぇ...夏祭りには頑なに浴衣なんて着なかった唯が...成長したねぇ」

今度は遠い目をしながら何かを言ってる。


こわい。

こわいよ、お母さん!


そんな私の心の叫びが聞こえたのか 何かを言うのをやめたお母さん。


「お隣の陽くんかしらね?」

「ゴホッ...なななななななんで分かったの!?」


今度は爆弾を投げてきやがった。


「あら、冗談だったのに」

「...もう!」


恥ずかしいやらなんとやら。

カァーと頬が熱くなる。


これはさっさと食べ終え、部屋に逃げるのが一番!

そう考え、残り少ないご飯をガーッと掻き込む。


「ごちそうさまでした!」

そう言って 食器を台所へと片付けた。


背後から生暖かい視線をおくられている気がする。


ドタドタと階段を上って自分の部屋へ逃げ込んだ。


すぐさま、ベッドの上にダイブ。




この時の私は既に『食器を洗う』なんてお母さんと約束していたことを忘れていた。
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