【短】初恋ラビリンス
ハァと深〜いため息をつく。

こんな気持ちのままじゃ陽に失礼か。


お母さんにも

「ため息なんてついたらせっかく可愛いのに勿体ないわよ」

なんて注意されてしまった。


確かに浴衣は白地にピンクの朝顔と可愛らしい。

久坂さんなら似合うんだろうなー...とマイナス思考に陥る。


このままではいかんと両頬をぺチンと軽く叩く。

多分 目は覚めた。



陽は夏祭りに久坂さんじゃなくて 私を選んでくれた。

今はそれだけでいい。

それが真実だから。



なんだかんだで無駄口を叩きながらも すぐに着付けは終わった。

「お母さんありがとね!」

真っ赤な鼻緒の下駄を履いていこうと玄関に移動。


...しようと思ったら お母さんが満面の笑みで私の肩を掴んでいる。

「ちょっと待ちなさい」

「な、何?」

「化粧、しないといけないわよね?
それと髪も上げないといけないわ
唯は確かにそのままでもかなり可愛いわよ?
でも、折角のデートですもの
気合の入れすぎってことはないと思うわ」

口早にお母さんが言ってきた。

目がランランとしててちょっと...いや、かなりこわい。

これは断れない。


「お願いします...」

小さな声で言っていた。



< 12 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop