バーフライズ・ストンプ
ドアを開けると、先に目についたのは男物のスニーカーだった。

パンプスを脱いで、中へと足を踏み入れる。

2LDKの間取りのこの部屋は、1人で暮らすには充分過ぎる広さだった。

ある部屋の前に立つと、そっと音を立てないようにドアを開けた。

ドアのすき間から漂ってきたタバコの匂いに、思わず顔をしかめた。

センセイの躰から漂う香りとは大違いだ。

耳を澄ませてみると、寝息が聞こえた。

…この様子だと、また仕事を辞めたようだ。

気づかれないようにこっそりと息を吐いた後、ドアを閉めた。

つきあって2年目になる彼氏とは友人同士の飲み会――俗に言う“合コン”と言うヤツだ――で知りあった。

彼はわたしの家に勝手に転がり込んできて、勝手に暮らし始めた。
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