しあわせのかたち
「七海、今好きな人はいる?」


“好きな人”

それは……

今、目の前にいます。


そうなんだけど、私は何も答えられなかった。

何も答えられないでいると、碓井主任の左手が私の右手にそっと触れる。

ただでさえ、緊張でドキドキしていた私だけど。

触れられた瞬間、私の心はさらにドキドキト動き出す。


「俺が異動してきて、まだ数ヶ月だし、七海は俺の事もまだよく知らないと思う。今、こんな事を言われても、七海は困るのはわかっている。だから、急いで答えを出さなくていいからさ……。俺との事、考えて?」


碓井主任の言葉に、私は頷いた。

私も碓井主任に惹かれているし、碓井主任の告白を聞いて、信じられない気持ちもあるけど、嬉しいと思った。

でも、阿部の事もあるし、今すぐには答えられない。


「俺がこんな事を言って、七海を困らせているのはわかっているんだけどさ。出来れば仕事中は普通に接して欲しいんだ」


「はい」と、私は小さな声で頷いた。


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