ボクサーな彼女
「二人ってほんとに仲良いよね。羨ましい」と彩がボソッと呟くと、

「あら、私からしたら陸君と彩ちゃんが羨ましいわよ?だって陸君、理想の王子様じゃない。理亜は独占欲強くて、カッコいいけどダサい…上に性格チョト曲がってるし…」と紀子が言った。

「紀子てめぇ、喧嘩売ってんのか?」と理亜が言うと、

「売ってないよ?事実だよ」と紀子は言った。

「紀子さん、ありがとうございます!!私、自分がどうすべきか、何となく感じ取れたような気がします!!
私は陸と仲直りするべきですね。
これからのためにも…けど、もう少し時間が必要ですね。
ゆっくり家帰って考えますね」と彩は言った。

「よしっ!じゃあそろそろ海出て、ランチして帰ろうか。お兄さんがおごってあげるから♪」と理亜は言って、

さっさと海を上がってしまった。

取り残された紀子と彩は顔を見合わせて笑い、「行きましょう!」といって二人も海を上がった。

三人は着替えて浜辺を少し歩いて、大通りに出た。

そして、ランチするためにお店に入った。

三人はテキトーに注文をした。

注文したランチプレートが運ばれてきた。

三人は「いただきまーす」と声を揃えて食事を始めた。

「うっまぁー」と言って、夢中で食べてる理亜を、紀子と彩は楽しそうに見ながら食べた。

「紀子のそれ、ちょっとくれない?」と目をきらきらさせていう理亜に、

「しょうがないなぁ~はい、あーん」と紀子は言って、理亜の口元に持っていった。

理亜はあーんをして食べると、「こっちも旨いなあ~」と嬉しそうに言った。

「楽しそう…私もしたいな…」とまたぼやく彩に、

「出来るよ!!陸君なら喜んであーんしてくれるはずだよ!!」と紀子は言った。

「アイツ、彩のことほんとに大好きで大事なはずだから、早く仲直りしてくれよ?じゃないと俺ら、いつまでもお前に邪魔されるの嫌だし。俺らだってたまには二人きりでゆっくりデートとかしたいんだから」と理亜は言った。

三人はゆっくり食事を楽しんで家に帰った。
家に着いた理亜は陸に「ごめんな…悪かったと思ってる。
けど、気持ちはわかってほしい。
お前に辛い想いさせたよな。けど、ほんと、克服して欲しかったんだ。恋人と海デートを楽しんでほしいからさ…」と言った。

「ありがとう。わかってるよ!!」と陸は言った。

「彩泣いてた。俺は彩の涙を見てられなかった…泣かさないでくれ、ちゃんと仲直りはしてくれよ?」と理亜が言うと、

「はい、彩さん、俺のために、涙流してくれたんですか?嬉しいです。俺、気持ち落ち着いたらちゃんと謝ります!!」と陸は言った。

「そうしてくれ。彩のこと大事にしてくれよ?俺にとって彩はお前と同じくらい、大切なやつだからな」と理亜は言った。

それからしばらくの間、彩は自分に自問自答を繰り返していた。

その間、二人は会うこともなく、お互いに連絡することもなかった。

二人が会ったのはそれから1週間ぶりの部活の時だった。

理亜と一緒に早めに来ていた陸は彩を待ちながらずっとそわそわしていた。

彩が来ると、とても嬉しそうに彩の方にかけより、彩に抱きついた。

そして、「ごめんなさい。ずっと連絡もせずに…彩さんに早く会いたかったです。寂しくて、寂しくて…息ができないほど苦しかったです」と言った。

彩は何も言わずにただそれを受け止めているだけだった。

「もうすぐみんな来て練習始まるから、仲直りは外でしてきてくれ」と理亜は気をきかせて言った。

そして、彩と陸は外に出た。練習場の裏…静かな場所に陸と彩だけ…。

しばらく二人は何も言わなかった。

しばらくして、彩が「陸、ごめんね。私、あなたのこと何も知らなくて…
辛かったよね。無神経だった。
この会えなかった1週間、ずっと陸のこと考えてて…
私はどうしたいのか、自問自答を繰り返した。
けど、答えは出てくれなかった。けどね、1つだけわかったことがあるんだ。
それはね、私は陸が大好きで、私の恋人は陸しかいないってこと。
陸のそばにいたいし、陸にそばにいてほしい!!それは理亜さんとか、他の誰でもないんだよね、陸がいいんだ。
だからお願い、これからもそばにいて、私と一緒に頑張って!海デートだって今度は二人でしよう?もう大丈夫!!
陸が辛いならムリはさせないから…けど、理亜さんたちに羨ましがられるぐらい楽しい最高の思い出を二人で作っていこう!」と言った後、

「仲直りの握手…」と言って手を差し出した。

陸はその手を自分の方に強く引き寄せると、少し強引に、彩の唇に自分の唇を重ねた。

そして、息ができないほどに激しくキスをした。

そして、陸は、「じゃあ、これで仲直りね?仲直りのちゅーだよ」と楽しそうに笑った。

その陸の笑顔を見て、彩も思わず笑みがこぼれた。

「陸…力、強くなってるね」と彩が言うと、

「でしょ~。だって俺、毎日兄貴にしごかれてるもん。うちに来た以上はへっぴり腰じゃ困る!!って」と陸は言った。

「そっか…じゃあ仲直りもちゃんとしたことだし…戻ろっか」と彩が言って二人は練習場に戻った。

夏休みの間に足に入ってたボルトが無事に抜けて、彩は、本当の完全復帰が出来るようになった。

体は自由に動き、心も少し軽くなった。

そして、彩は今まで以上に練習を頑張るようになった。

立ちはばかる壁は女という壁…

いくら強くて、努力しても、体力と体格の差は越えられない。

ならばと、人よりなん十倍もの努力をし、誰にも負けないという強い信念だけを持って日々の練習に励んだ。
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