ボクサーな彼女
第2章 始まり
復帰を決めた彩は、上手く動かない体に泣きたいほど苦しみながらも練習を始めた。

陸や理亜に支えられながら。

体は徐々に慣れていき、完全復帰から1ヶ月、彩はリングの上にいた。

多くの観客が見守る中、彩は、順調に勝ち進み、決勝を迎える。

相手は、昨年、中学生王者になった人物、草津。

デッドヒートする試合、皆が固唾を飲んで見守る。

最終ラウンドまでもつれ込んだ。

中々決着はつかず、

お互いに疲れ見え始めた。

そこで先手を仕掛けたのは彩。

一撃必殺をかましたが、上手く避けられてしまう。

が、気持ちを込めて放ったアッパーが相手にクリーンヒットし、相手は沈んだ。

そして彩は大会史上初の女子チャンピオンになった。

なりやまない拍手。

彩の周りにはたくさんの人が集まり、彩を祝福した。


草津は「初めて負けたよ。けど、いい試合だった。ありがとう、いつかまたきみと戦える日を楽しみにしているよ」とわらって握手を求めた。

彩は笑って強く握り返した。その日、彩は家でゆっくり休み、家族に盛大に祝ってもらった。

だが、足の激痛に耐えて上手く笑えなかった。

翌朝、校内新聞に大きく載る自分を見て、嬉しくて、頬が緩む。

周りからたくさん声をかけられながら道場に向かった。

道場についた彩は、

「しばらく休ませて下さい。自主練はちゃんとします」と頭を下げた。

「彩さん、急にどうしたの?」と心配そうに声をかけてくれるキャプテンや仲間たち…彩は何も言わなかった。

と、言うより、何も言えなかった。

「もしかして…足ですか?彩さん」と言ったのは陸だった。

「どーしてわかったの?」と彩が訪ねると、

「わかりますよ、ずっと見てますから。ムリしないでくださいね」と陸は返した。

「私も出来るだけ早く皆とまた頑張れるように、もっと体力つけて、鍛えて戻ってくるから。それまで少し休んで、ドクターと相談するね」と彩は言った。
< 3 / 61 >

この作品をシェア

pagetop