ボクサーな彼女
「ボス?」と彩は言って自分の状況を把握した彩は慌ててボスから離れようとするが、ボスはそうはさせなかった。「おい、あぶねぇ、暴れんなよ!!」とボスは言って、「誰かイス持ってきて」と声をかけると、オーナーがイスを持ってきてくれた。彩はそのイスに座らされた。
「すいません…私、また負けたんですね。初めて、連敗」と彩は言うと、大粒の涙を流した。今まで堪えていた涙は溢れんばかりに流れ落ちた。会場の観客が見守る中、陸や理亜、紀子、栄介達は駆けつけてくれた。ボスはそんな彩の背中を優しくさすった。そして、「大丈夫、大丈夫」と優しく声をかけた。陸は無言で立ち尽くしていた。声をかけたいのに、どう声をかけていいか、わからず、ただ立ち尽くし、成り行きを見守っていた。そして、ボスはMCのところに行き、マイクを借りると、「本日はたくさんの方にお集まりいただきましたことに感謝致します!!ここにいる、彩に替わり、熱く御礼申し上げます!!皆さんも知っての通り、去年の今頃、彩は事故に遇い、病室で眠っていました。あのときから、今に至るまで、どんなに苦しくとも必死に頑張り、ここまで来た彩を称え、皆さんで盛大な拍手を送りたいと思います。彩のこれからを期待して…皆さん、拍手をお願いします!!」と言うと、MCにマイクを返して、拍手を始めた。周りもつられるようにして拍手をし、「よく頑張ったよ~」とか「お疲れ様~」などの声をかけてくれた。悔しくて、苦しくて、辛くて泣いていたはずの彩の涙は次第に、嬉し涙に変わっていた。彩はイスから立ち上がると、観客達に深く頭を下げた。
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