それでもあなたと結婚したいです。

明らかに、わざとらしい大声で呼ぶ声が響いた。

寸での所で二人ともパチッと目を開ける。


『黒木先生!?』


声がユニゾンする。


「入ってもいいですか?」


「ちょっちょっと待ってください!!あのっ!今っ!」


千春さんに、手伝って貰って慌てて服を着替える。


「どっどうぞ!!」


水色のシャツにマリンカラーの入ったネイビーのカーディガンが爽やかに、ゆっくりとした足取りで黒木先生が入ってきた。

おそらく二人なのを分かっていたのだろう、全く驚きもせずこう言った。


「あれ?お二人一緒だったんですか?驚きました!」


憎いくらい、わざとらしい。


「えぇ…はい。すいません、事務所に勝手に泊まったりして。」


「いいえ。結構ですよ!むしろ嬉しいです!!ここが二人にとって特別な場所になって。」


「えっ!?なっ何の事ですか?」


黒木先生はにっこり笑い、私の前まで来ると、そっと耳打ちした。


「ブラウス…裏表逆ですよ?」


バッと確認すると羽織るだけのブラウスは裏返っていて、タグがぴょんと飛び出ていた。


「あぁ~~~………。」


「いいじゃないですか。私は泉さんの主治医なんですよ?知る権利が有ります!」


陰に行って、ブラウスを直しにかかる。


「そうですけど、まだ………恥ずかしいんです!!乙女心を察して、ここはスルーしてくださいよ!!もぅ!!」








< 314 / 436 >

この作品をシェア

pagetop