それでもあなたと結婚したいです。

あの嫌な感覚………覚えている。


一向に震えが止まらない手が俺に教えている。


一瞬見えたあの光景は確かに実家の父の書斎だった。


沢山の本の匂い。


夕暮れの西日が窓から差していた。


俺はあの日、誰かとあの部屋に居た…………。


「何なんだ。この記憶………。」


次から次へと断片的に浮かんでくるイメージ。

俺はこの押し寄せる不安の真実を確かめる為に実家へと向かっていた。

あの部屋に行けば何かが分かる。


そんな気がして、じっとしていられなかった。


ハンドルを握る手に力がこもる。


誰よりも大事にしたかった人をあんな目に合わせてしまった自分が許せなかった。


花枝が倒れる光景がまた頭の中でリフレインする。


血を流して、何度呼んでもぐったりして目を閉じたまま動かなかった。


「クソッ!!」


怒りのやり場が無くて握っていたハンドルを思いっきり殴った。



(………………もう…これ以上、彼女の傍には居られない…………………。)





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