それでもあなたと結婚したいです。
千春さんが帰って来るまで、私はずっと煮込み料理の鍋を見つめて考えていた。
白川部長の専属の秘書になってからずっと今まで、寄り付く女を排除してきた。
変なあだ名まで付けられて頑張ってきたけど、白川部長が独身ならどうしてそこまでして女の子を寄せ付けなかったのだろう。
私にしてくれた奥さんの思い出話は、全部作り物だったのだろうか?
秘書である私までも寄せ付けないようにバリアを張っていたのだろうか?
考えれば考えるほど分からなくなり、少し寂しい気分になった。
「花~枝。………花枝!!」
「はっはいっ!!」
気がつくと千春さんが不思議な顔して横から覗いていた。
「どうかした?具合悪いの?」
「うぅん………違うよ!!ちょっと考え事してただけ。お帰りなさい!!」
「考え事?もしかして俺の事!」
「えっ?………ごめん、違う人の事。」
とっさに否定すると千春さんはドンッと近くの壁を叩いた。
(あっ………壁ドン。って違うか。)
「酷いよ花枝…。俺が一生懸命花枝の為に頑張って仕事してきたのに、違う人の事を考えていたなんて………あぁ、もうヤダ………やってられないよ。」
大袈裟な態度で千春さんはソファーに倒れ込んだ。
「あぁ、ごめん、ごめん!!千春さん、怒らないで!そうゆう意味じゃ無いから!!」
うつ伏せに向いたまま一向に動く気配がない。
「千春さん………ごめんってば!」
腕を掴んだ瞬間彼はバッと起き上がると私を抱き締めた。