それでもあなたと結婚したいです。

「私は、女性に性的興奮が出来ないのです。身体の機能は問題ないのですが、心に疾患があるようで、そうゆう行為にも嫌悪感があります。今、黒木先生の所で治療を受けています。」


「黒木先生……治療って……?」


「貴女が結婚した相手は悪質な欠陥人間だったんです。最初は結婚しないつもりでした。このまま、ずっと独りで生きていこうと……でも、終わりのない縁談にすっかり疲れてしまって…………こうなってしまいました。本当にすいません。でも……」


ダンッ!!!


私は思いっきりテーブルを叩いていた。


色んな感情がぐるぐる私の中で絡まりあって体が震える。


「…………………酷いです。……いくらなんでも酷すぎます。何で私を選んだんですか!私は、ずっと貴方に近づきたかったし、子供だって夢だったんです!!結婚してから言うなんて、男として卑怯です!!!!自分の体裁が守れれば私の事なんてどうでもいいんですか!!!!!女をバカにするな!」


バンッ!!!!


力任せにドアを閉めて私は走り出した。


どこでもいいから行きたかった。


やるせない自分の将来を悲観して大声を挙げて泣きたかった。

暫くの間街をさ迷い、気づくと私は、ドレス姿に裸足の見るからにみすぼらしい姿になっていた。


ガラスの靴は二つとも置いてきてしまった。


これじゃあ王子様も誰も見つけてはくれないだろう。


「うぅ……うぅ……うぁぁ………。」


心は冷えきっているはずなのに次から次へと流れる涙は熱いまま溢れ落ちる。


「ヒック………ヒック………千春さんの……ば…ヒック……かぁ!」


公園のブロック塀に腰掛けると待っていた様に雨が降りだした。


(もう、どうなってもいいや……何も考えたくない。)


どのくらいこうしてたのか、ふと雨が止んだような気がして顔を上げた。


「大丈夫ですか?」


そこには、私に傘をさした黒木さんが立っていた。





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