キミが笑ってる、この時間が幸せなんだ。

イイワケ

「…別に良いよ。」

「え?」

「だ、だから、傘に入れてあげるって言ってるの…。」

不意にキュッとした心臓を押さえつけてたら、最後の言葉は声が小さくなってしまった。

それでも、男子はパァッと顔を輝かせた。

「ほ、ほんとか!?ありがとな!すげー嬉しい!」

そしてまたクシャっと笑う顔にキュッてした。

「(な、名前も知らないのに何でこんなに意識しなきゃなんないの…!?ましてや、さっき笑われまくったのに…!)」

自分でも分かる。

きっと私は今、耳まで真っ赤だろう。

それを隠すかのように、私は慌てて話し始めた。

「べ、別にいいよ、それくらい!それより、名前はなんて言うの?」

「オレか?オレの名前は須賀 優翔(すが ゆうと)。優しいに翔くで優翔な!お前の名前は?」

「ひ、柊 愛魅…。」

「そっか、よろしくな、柊!」

「う、うん…。」

あぁ、またその笑顔…。

私ってこんなにあっさり意識しちゃうんだ…。

「(でも…。)」

もう、失恋したくない。

心のどこか、もう1人の自分がそう言っている。

また悲しい想いをしてまで、好きにならなくてもいい。

ましてや、ちょっと笑ってくれただけで好きになってしまうなんて、どうかしてる。

本当はこんなにあっさり人を好きになりかけてる自分に嫌気が差しているんだろう。

だけど、誤魔化すように次から次へと言い訳が浮かんでくる。

私はまだ錦先輩が好きなんだろう。


だから、須賀くんなんて、好きにならない。


そんなことを心のどこかで思いながら、私は須賀くんと話しながら帰ったのだった。
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