夏の前の日

俺の横には、あくびをしている
刑務官。

人前で言うには恥ずかしいこともある。

そんなの今は気にしとけんけど
とにかく俺は・・・。

「リンに会えて良かった」

「こんなしょーもない男なんて
 もう捨てられると思った。
 来てくれんと思ったし、すまん。
 ほんとにごめんな」


今の俺の表情はきっと
ぐっしゃぐしゃだと思う。

涙を堪えるのに必死。
年々、涙もろくなっていないか?


「約束したじゃん。
 リンが帰ってきたら結婚するんでしょ」

「・・・え?」

「また約束破るつもり?
 それだけは許さんけん」


こんな状況下でこんなことが言える
リンは本当にイカれている。

でも、言わなくちゃいけないこと。


「俺、執行猶予持っとるけん
 実刑くらうよ。2年か3年か」

「じゃけんなに?ずっと待つよ」


俺の目を見て言い切った。
何も揺らいじゃいなかった。

ーーー我慢していた涙が溢れ出た。

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