罪人と被害者

心細くてそう呼べば、ゆっくりと瞼が開いた。


「…ん…」


軽く身じろぎして、肩と首を回して。

「あ、はよ」

「…お、おはよ」

「なんだ、起こしに来てくれたのか」


寝起きだから、おじさん少しとろんってしてる。

真面目そうな顔からは想像のつかない油断した顔に、ちょっと見入った。



「9時か、もう少しゆっくりしようかと思ってたんだが…まあいいか」

つけたまんまの腕時計を見た。

「…おじさん。ベッド」

「ああ…。仕事がたまっててな。リビングでやっていたら、そのまま眠ってしまった」


うそだ。



だって資料はガラスのテーブルの上で、ソファからは距離がある。

そのまま、というのは語弊があるだろう。


「…」

「どうした?…ああ、腹が減ったから起こしに来たのか、ちょっと待ってろ」



そういう問題じゃない。

そう言おうかと迷ったけど、なぜか癪にさわるのでやめた。
< 14 / 25 >

この作品をシェア

pagetop