罪人と被害者

◇◇◇


「あ、外ですかケイさん?」


オフィスを出ようとして後輩にそう聞かれ、ああと頷く。


「新規にすぐに来て欲しいと言われたんだ。

ツマんだら綺麗な白だったし、なんせ80万だからな」


「そうですか」

後輩は俺が渡した明細を見て、げ、と呟いた。

「ちょっと遠くないですか?行って帰ってきたらもう定時ですよ

そのままかえったらどうですか?タイムカードは押しとくんで」


そう言われ、頭をよぎったのは書類。

客に貸し出してすぐに領収書などをまとめて社長に提出しなくちゃならない



「いや、また帰ってきて書類を…」


しかし、リクが浮かぶ。

なるべく定時に帰ってやりたい。


しかし、書類が…


「…書類は明日の朝にしよう。
タイムカードを頼んでもいいか?」


「はい!わかりました!」




にっこりと微笑んだ後輩に甘える。


以前にはなかった光景だ。


だからか、最近俺はまわりによく気遣われてしまう。

会社の人たちはたぶん俺が女でも見つけたと思ってるんだろうな。



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