妖怪アパートの問題児と先






英語の担当教諭は今年の秋に千晶と同じく入ってきた、



青木先生だ。






清楚で、おしとやかで、美人で、
長い艶やかな黒髪がとても似合う。

授業もすごくわかりやすい。





……………






……………だが。




稲葉や、柚木、田代たちからの評判はすこぶる悪い。




青木は、困っていたり、悲しんでいる生徒に親身になって助けを出す。


だから、柚木も夕士もとても親切にしてもらった。


なにせどちらも両親がいないからだ。



青木からしてみれば、


「稲葉くんも柚木さんも、ご両親がいらっしゃなくて、一人暮らし・・・・・
…大変な事ばかりだろうから、教師である私が力にならなくっちゃ!」




と言う感じなんだろう。






だがしかし。






べつに稲葉も柚木も、そこまで悲しんでいないわけで。




確かに辛いこともあったが、別に今はそこまで落ち込んでもいない。

両親との別れから随分たって、現実と向き合い、大人になったからだ。





それでも青木はまるで、
可哀想な子を見るように接してくる。






‘一人暮らしで傷ついている可哀想な子’

として、


二人に接している。






だから、当てはまらない二人には、いらっとくるわけで。



もちろん、当てはまる生徒もいる。














「今日は、聖書の朗読をします。

私の好きな部分の朗読よ。

意味はわからなくていいの。
英語を聞くことが大切なのよ。」










静かで透き通るような声で、
青木が朗読を始めた。








べつに嫌いなわけではないが…やはり面倒な性格だ。





千晶なんて、



「煙草は体にも毒ですし、生徒にも悪影響ですわ。
お辞めになった方がよろしいですわよ。」




と、言われたのに対して







「大きなお世話です。」







なんて返してくれたのだから
その場にいた柚木も夕士も吹き出すのをこらえるのに必死だった。









< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop