虹色のラブレター
* 11 *


次の日の朝、僕が目を覚ました時、千鶴の姿はこの家のどこにもなかった。

彼女が寝ていたはずの隣の和室には、布団が綺麗にたたんで重ねられていた。

壁に吊られてある時計を見ると、時間は10時を過ぎたところだった。

僕は重い体を起こして、布団の上であぐらをかいた。

無意識にテーブルに目をやると、そこにはラップにかけられたトーストとハムエッグ、そして、一枚のメモ紙が置かれていた。




「智、おはよう。

学校があるから行って来るね。

起こさなくてもよかった?

気持ち良さそうに眠ってたから…ごめんね。

一応、朝ごはん作っておいたから食べて下さい。

部屋は自由に使ってくれたらいいけど、もし出掛けたり、家に帰ったりするなら鍵かけていってね。




千鶴




p.s. 昨日は本当にありがとう。

また…来てくれたら嬉しいです。」




メモ紙の隣には、部屋の合鍵が置かれてあった。

僕はその合鍵を強く握り締めて、小さくガッツポーズをした。



< 138 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop