あの子が知らない君を見ていたい
気になる君は

高校1年生の夏休み前。

気づいたら、あいつのことを目でおっていた。


「笨豪!」

あいつの名前、遠野 強汰 (とおの きょうた)。
小学5年生の時に引っ越してきて、仲良くなったきっかけは同じ委員会ってことだけ。
それから私とあいつと違う高校に通うもう1人。
私たち3人は幼馴染み、いや、あいつとは腐れ縁?

「何?」

少し不機嫌ぎみに聞き返す。
ほんとは全然不機嫌じゃないのに…

「俺さ、十森さんと話せたんだー!」

…また、あの子の話か。
十森 花乃 (ともり はなの)ちゃん。あいつの好きな人。
十森さんはいい人。同じ委員会だからあの子のことよく分かる。
可愛いし、常に笑顔だし、気が利くし。
でも、あの子には…

「彼氏いるのに諦めないってすごい根性だね」

また、トゲトゲした言葉で返す。
どうして素直になれないかな。

「話してるだけで幸せだからいいの」

嘘つき。
私知ってるよ?
あの子と話してるときいつも切なそうな顔で話してるくせに。

「あっ、やべ。授業始まる」

あいつは「またな」と言って、私が向いてる方向と反対方向に急いで走っていった。
移動教室だったのかな?
間に合うといいけど。

…あーーーー!! もう、なんで! あいつの心配なんかしちゃうんだろう。
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