強引上司の溺愛トラップ

自分の気持ち、ちゃんと伝えようと思ったのですが。

それから一週間が経った頃だった。

午前中、いつものようにデスクで仕事をしていると、「すみません」とカウンター越しにお客様に声を掛けられた。


私は慌てて立ち上がって、カウンター越しにお客様の正面に立った。


「はい。いらっしゃいませ」

「すみません、ええと……」

そのお客様は、私より少し年上くらいの、綺麗な女性だった。雰囲気があって、まるで毎週見ている火曜ドラマの主演女優みたいに美人だ。


左手を口元に充てながら言葉を探すその女性の左手首に、高級そうな腕時計がキラリと光った。

融資の相談じゃないのかな? 預金カウンターと間違えてる?

さりげなく声を掛けようとしたその時、女性の斜め後ろの応接室が開いて、中から課長が出てきた。課長は、自分のお客様をその場で見送ったあと、その女性に気付いた。


「……千鈴(ちすず)?」

「優くん!」

その女性は、笑顔で課長のことを名前で呼ぶと、


「会いたかった!」


と、その場で課長に抱きついた……。




……えええ!!?
< 116 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop